患者さまのお悩み

2019年1月30日 水曜日

インフルエンザに注意しましょう

 今年はインフルエンザが、かなり流行っています。かからないためには、どうすればよいでしょうか?と患者さんにしばしば聞かれますが、答えは簡単です。寝不足、過労などに気をつけ、睡眠時間と食事に注意をし、処方されている漢方薬を飲めば免疫力も上がるので大丈夫です、と答えています。体質にあった漢方薬を飲んでいれば、免疫力は上がり、インフルエンザや風邪には、なかなかかかりません。実際、私自身、このことを守れているときにはインフルエンザや風邪にかかったことありません。忙しくて寝不足をしたり、過労のときは風邪などに罹患してしまうことがあります。危ないとわかっているので注意するのですが、やはり、疲れや寝不足は免疫力を落としてしまうのでしょう。寝不足や過労に注意する事が大事のようです。また一般的な手洗いやうがいなども大事と思います。
 インフルエンザにかかってしまったらどうするかというと、抗インフレンザ薬、タミフルやゾフルーザ、リレンザなどを、できる限り早く使用することがお勧めです。漢方薬もありますが、使い方が多少面倒です。漢方薬は体質を考えて処方を決める必要があるからです。しばしばインフルエンザには麻黄湯が良いというようなことが言われていますが、体質があっている場合のことです。麻黄湯は身体が「実」(身体の闘病反応が強いこと)のとき使う薬で、身体が弱って闘病反応が弱っているとき使うと、悪化する危険があります。仕事が忙しく疲れているところにインフルエンザにかかってしまった場合などは、闘病反応は低下していると考えられるので麻黄湯は止めるほうが無難です。タミフルやゾフルーザのほうが安全で確実です。高齢者も麻黄湯が適する人はあまりいないので、やはり飲まないほうが良いです。高齢者は麻黄附子細辛湯が適することが多いですが、やはり、使用には注意が必要で、普通の人は現代薬を使うほうが安全です。
 熱が下がり落ち着いてきたところで、食欲がない、だるいなどの症状が残るとき、漢方薬の出番です。そんなときは補中益気湯(これはそれほど危険な薬ではありません)が良いことが多いです。
 蛇足ですが、麻黄湯をインフルエンザの予防的に飲む人がいました。体質に合っていればよいのですが、合わない場合は副作用をおこしますし、インフルエンザ予防のために麻黄湯を飲むという方法はありません。

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2018年12月28日 金曜日

(続)眠気を覚ます漢方薬

 前回に少し補足です。葛根湯はいくつもの製薬会社から販売されています。どれも同じかというと、葛根湯に使われる生薬の7種類は同じですが、使われている生薬の品質と、生薬の使用量が製薬会社によって違っています。目を覚ますのに重要な生薬、麻黄(まおう)の量は、医療用の葛根湯では3~4g、市販の葛根湯では2~4gと会社によって幅があります。単純に考えると、麻黄の量2gと4gではその中に含まれるエフェドリンの量は2倍の差があることになり、効果に差が出そうです。また使用する生薬の品質は重要です。工業製品と違って天然物は品質による差は大きいのです。例えばミカンを食べても、味が濃く甘くておいしいものもあれば、味は薄く何を食べているかわからないようなミカンもあります。品質の良いものと悪いものでは、エフェドリンの含有量にかなり差があり、効果も大きく違います。北里研究所にいた頃、時々煎じて葛根湯を飲んでいたのですが、あるとき飲んだ葛根湯は、急に眼がパットさえ、いつもと比べて頭がスッキリしたのでびっくりしたことがあります。これは麻黄のロットの違いによるものですが、その差に驚きました。品質による作用の差は皆さんが考えているよりも大きいものなのです。ただ、医薬品として使用されるからには、ある程度の基準が決められているので、あまり心配することはないのかもしれませんが。
 葛根湯の目を覚ます作用は、麻黄の品質と使用量によって製薬会社によりかなり違うことが理解してもらえたかと思います。販売されている葛根湯なら、生薬の成分量が書いてあるので、それを見て選んだほうがよいです。その中の麻黄(まおう)の量が少なくとも3g以上はいっているものにすべきです。3gより4gの方がよいのですが、品質の違いで1gくらいの差は関係ないこともあります。内服する葛根湯の品質がわかるといいのですが、これは製薬会社を信じるしかありません。
 顆粒などの粉薬では効果を感じられない場合は、高いですが品質の良い麻黄を使った煎じ薬がよいです。やはり品質が悪い生薬ですと効果は弱いです。

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2018年11月30日 金曜日

眠気を覚ます漢方薬

 受験シーズンなので、眠気覚ましの漢方薬について書きます。漢方薬で眠気を覚ます薬があるのかというと、本来の使われ方ではないのですが、あります。それは意外かもしれませんが、風邪薬で有名な葛根湯です。現代薬の風邪薬というのは眠くなることが多いので大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、葛根湯には眠くならず逆に目を覚ます作用があるのです。漢方の大家、大塚敬節先生も使われていたようです。
 なぜ眠気に効くかというと、現代医学的にある程度説明ができます。葛根湯の構成生薬に麻黄(まおう)という生薬があり、この中にエフェドリンという物質が含まれています。これは咳など止める作用のある物質ですが、目を覚ます作用もあるのです。実は覚せい剤、メタンフェタミン(その昔疲労がポンととれるので「ヒロポン」といわれていました)はこのエフェドリンから作ることができるのです。つまり麻黄のエフェドリンは覚せい剤のメタンフェタミンと構造が似ているので合成することができるのですが、構造が似ているので似た作用を持つのです。そのため覚せい剤の持つ覚せい作用が多少あり、目を覚ますことができるのです。ただ覚せい剤に似ているといっても危険な薬ではないので心配はいりません。
 勉強をしていると、目を使うためか首筋が張ってきます。この首筋の張りにも葛根湯は効果を示すので、他の麻黄が入った漢方薬を飲むより効果が良く目が覚めます。ただし、葛根湯は胃腸が丈夫ではない人が飲むと、胃腸の調子を悪くすることがあるので注意が必要です。胃腸が弱くない人でも空腹で飲むと、やはり胃腸を悪くすることがあります。お腹に何も入っていないで飲んだ方が効果はあるのですが、連用するときは胃腸障害に気をつけてください。また煎じ薬と比べると顆粒の薬では薬効は落ちますが、煎じ薬でも質の悪い麻黄が使われていると効果は落ちます。

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2018年10月31日 水曜日

好転反応

 先日、漢方薬飲んで調子悪くなった患者さんに「調子が悪いのは好転反応でしょうか」と聞かれギョッとしました。私はこの「好転反応」という言葉は大嫌いなので、驚いてしまったのです。というのも、「好転反応」という言葉は、漢方薬を投薬して悪化したとき、その悪化をごまかすためしばしば使われる言葉と思っているからです。
 好転反応というのは、「一時的に悪化するが、これから良くなる兆候」というような意味で使われています。東洋医学の世界でも西洋医学の世界でも普通使われる言葉ではありません。ただ漢方ではこれに似た言葉として、瞑眩(めんげん)というのがあります。治療により一時的に病状が悪化後、速やかに病気が治ることを言います。瞑眩はめったに起きるものではなく、特にエキス製剤では、ほとんど起きるものではないと私は思っています。したがって瞑眩という言葉を使う機会はめったにありません。ところが好転反応という言葉はやたらと使われています。ちょっとした変化、たとえば眠くなる、食欲が出るなどの変化も好転反応であり、病状が悪化したときにも、改善を期待して使われます。瞑眩と比べると、好転反応はちょっとした軽い変化にも使われています。
 瞑眩という漢方用語を誰かがわかりやすく、使いやすくするため「好転反応」という言葉が発明されたのではないかと思っています。そして言葉が独り歩きして、ちょっとした軽い病状の変化も好転反応というようになったのでは?と思います。私が漢方を始めた頃には聞いたことのない言葉でしたが、漢方治療していて病気が悪化したとき、ごまかすのに都合のよい言葉でもあるので、使用が広まった気がします。
 漢方薬を飲んでいて、主たる病気とは関係ない症状、たとえば尿量が増えた、薬を飲むと眠くなるなどの症状は漢方薬が効いている兆候で、好転反応といっていいものですが、私の知っている限りでは矢数道明先生や大塚恭男先生などの漢方の大家が、このような時に好転反応という言葉を使ったのを聞いたことがありません。それゆえ私も使う気が起きない言葉です。

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2018年9月29日 土曜日

(続)水逆

前回の続きです。水逆の治療からいくつか学んだという話です。
「五苓散は生薬を煎じるよりも生薬を粉末にした方が効果が高い」と明治時代の漢方の大家、浅田宗伯が本に書いてますが、そのとおりだと知りました。前回の話には書いていませんが、実は生薬の粉末の五苓散を投薬する前に、五苓散のエキス顆粒製剤(本当の意味の煎じ薬ではありませんが煎じてフリーズドライにしたもの)を飲ませたのです。結果は失敗で吐いてしまいました。このとき思いだしたのが前述の粉末のほうが効くという話でした。そこで娘なので実験台にして(ひどい父親です)粉末の五苓散を飲ませたのです。このときは飲ませ方も考えて、メープルシロップに混ぜて少しずつ舐めさせて飲ませました(粉末と煎じの正確な比較にはなりませんが)。それが効果を示して、娘は治癒したのです。この経験が影響して当医院では五苓散を処方するとき、メーカーのエキス顆粒ではなく、薬局で生薬を粉末にしてもらい、それをを処方するようにしています。
また、漢方薬の即効性についても学びました。風邪などでも漢方薬は即効性があるとはわかっていましたが、状態が悪いにもかかわらず、五苓散を飲ましたら、注射をした時のような即効性には驚き、ケースによっては本当に早く効くことを知りました。
 それにひきかえ、私の処方が悪かったのかもしれませんが、現代薬の効かない事にも驚きました。疾患にもよりますが、漢方薬は現代薬よりも効果が勝ることがしばしばあるので、積極的に使うべきだとこの時感じました。
 娘が五苓散をほんの少し口に入れただけで水逆が治ったのは驚きましたが、漢方薬の投薬量というのはケースによっては少なくてもいいことも知りました。もとより漢方薬の使用量というのは経験的なもので、あまり科学的ではないのです。たとえば、日本と中国では生薬の使用量がかなり違い、日本は中国の半分以下の量で使用していますが、効果に問題ありません。漢方の場合、昔からの経験も疑ったほうがいいこともあると知りました。
 この水逆の治療の経験は現在の私に大きく影響しています。

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