患者さまのお悩み

2018年10月31日 水曜日

好転反応

 先日、漢方薬飲んで調子悪くなった患者さんに「調子が悪いのは好転反応でしょうか」と聞かれギョッとしました。私はこの「好転反応」という言葉は大嫌いなので、驚いてしまったのです。というのも、「好転反応」という言葉は、漢方薬を投薬して悪化したとき、その悪化をごまかすためしばしば使われる言葉と思っているからです。
 好転反応というのは、「一時的に悪化するが、これから良くなる兆候」というような意味で使われています。東洋医学の世界でも西洋医学の世界でも普通使われる言葉ではありません。ただ漢方ではこれに似た言葉として、瞑眩(めんげん)というのがあります。治療により一時的に病状が悪化後、速やかに病気が治ることを言います。瞑眩はめったに起きるものではなく、特にエキス製剤では、ほとんど起きるものではないと私は思っています。したがって瞑眩という言葉を使う機会はめったにありません。ところが好転反応という言葉はやたらと使われています。ちょっとした変化、たとえば眠くなる、食欲が出るなどの変化も好転反応であり、病状が悪化したときにも、改善を期待して使われます。瞑眩と比べると、好転反応はちょっとした軽い変化にも使われています。
 瞑眩という漢方用語を誰かがわかりやすく、使いやすくするため「好転反応」という言葉が発明されたのではないかと思っています。そして言葉が独り歩きして、ちょっとした軽い病状の変化も好転反応というようになったのでは?と思います。私が漢方を始めた頃には聞いたことのない言葉でしたが、漢方治療していて病気が悪化したとき、ごまかすのに都合のよい言葉でもあるので、使用が広まった気がします。
 漢方薬を飲んでいて、主たる病気とは関係ない症状、たとえば尿量が増えた、薬を飲むと眠くなるなどの症状は漢方薬が効いている兆候で、好転反応といっていいものですが、私の知っている限りでは矢数道明先生や大塚恭男先生などの漢方の大家が、このような時に好転反応という言葉を使ったのを聞いたことがありません。それゆえ私も使う気が起きない言葉です。

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2018年9月29日 土曜日

(続)水逆

前回の続きです。水逆の治療からいくつか学んだという話です。
「五苓散は生薬を煎じるよりも生薬を粉末にした方が効果が高い」と明治時代の漢方の大家、浅田宗伯が本に書いてますが、そのとおりだと知りました。前回の話には書いていませんが、実は生薬の粉末の五苓散を投薬する前に、五苓散のエキス顆粒製剤(本当の意味の煎じ薬ではありませんが煎じてフリーズドライにしたもの)を飲ませたのです。結果は失敗で吐いてしまいました。このとき思いだしたのが前述の粉末のほうが効くという話でした。そこで娘なので実験台にして(ひどい父親です)粉末の五苓散を飲ませたのです。このときは飲ませ方も考えて、メープルシロップに混ぜて少しずつ舐めさせて飲ませました(粉末と煎じの正確な比較にはなりませんが)。それが効果を示して、娘は治癒したのです。この経験が影響して当医院では五苓散を処方するとき、メーカーのエキス顆粒ではなく、薬局で生薬を粉末にしてもらい、それをを処方するようにしています。
また、漢方薬の即効性についても学びました。風邪などでも漢方薬は即効性があるとはわかっていましたが、状態が悪いにもかかわらず、五苓散を飲ましたら、注射をした時のような即効性には驚き、ケースによっては本当に早く効くことを知りました。
 それにひきかえ、私の処方が悪かったのかもしれませんが、現代薬の効かない事にも驚きました。疾患にもよりますが、漢方薬は現代薬よりも効果が勝ることがしばしばあるので、積極的に使うべきだとこの時感じました。
 娘が五苓散をほんの少し口に入れただけで水逆が治ったのは驚きましたが、漢方薬の投薬量というのはケースによっては少なくてもいいことも知りました。もとより漢方薬の使用量というのは経験的なもので、あまり科学的ではないのです。たとえば、日本と中国では生薬の使用量がかなり違い、日本は中国の半分以下の量で使用していますが、効果に問題ありません。漢方の場合、昔からの経験も疑ったほうがいいこともあると知りました。
 この水逆の治療の経験は現在の私に大きく影響しています。

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2018年8月31日 金曜日

水逆

 「水逆」(すいぎゃく)という言葉知っていますか?漢方の用語で「のどが渇くので水を飲むが、気持ち悪くなってすぐ吐いてしまう」という状態をいいます。子供の急性胃炎のときなどにみられることがあります。
 漢方治療を覚え始めた頃、「水逆」に漢方薬を与えて劇的に効き、漢方薬の効果に驚いたことがあります。3歳の女の子でした。朝から機嫌が悪く、食欲もなく、朝食を食べたところ吐いてしまいました。軽度ですが下痢もして、発熱37~38℃、昼食も食べられません。のどが渇くというので、水を飲ませるとすぐ吐いてしまいます。そのたびに苦しがって泣きます。現代薬の吐き気止めや胃薬を飲ませましたが、改善しません。夜になっても少しもよくならなかったので、漢方薬で治療しました。状況から「水逆」と診断し、五苓散という漢方薬を与えました。五苓散は生薬の粉末を使い、製薬会社のエキス顆粒ではありませんせした。生薬の粉末なので美味しくありません。また水で飲ませると吐いてしまうことを考えて、メープルシロップに混ぜて、五苓散をなめさせました。すると、驚いたことに、与えようと思った量の半分も飲まないうちに機嫌が直り、スヤスヤと寝てしまったのです。なめさせてから5分もたっていないと思います。翌日には熱も下がっており、食欲も普通で、病気は治っていました。この効果には驚きました。この即効性と効果のすばらしさに、漢方薬はすごいのだと新たに思った記憶があります。実はこのときはまだ漢方の腕は未熟で自信がなかったので、最初は現代薬で治療したのです。しかし、結果は上述のとおり、あまり効果はありませんでした。そこで漢方薬で何か良い薬はないか調べていくうちに、「水逆」を見つけ、五苓散を処方したのですが、その効果のすばらしさに本当に驚きました。
 読んでいれば気がつかれるのではないかと思うのですが、私の娘が3歳の夏のときの話で、夏に子供の胃腸炎を見ると思い出します。

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2018年7月31日 火曜日

水ではなく、お湯を飲みましょう

 異常に暑い日が続いています。私は水分を控えましょうといつも言っていますが、これだけ暑いと現実に即していない気がしています。無理に水分摂取を我慢されて、脱水でも起こされると困るので、ある程度は水分をとっても良いと思います。しかし取るならばお湯にしましょう。暖かいものでもお茶などはダメです。なぜならお湯に比べておいしいので、飲みすぎてしまうからです。お湯はあまりおいしいものではないので、取り過ぎることがなくて良いのです。またクーラーで冷えてしまった身体に優しくもあります。
ただし、激しい運動をした後や、暑い外から戻り身体の中まで熱いときに、お湯はダメです。飲めばおそらく、気持ち悪くなるなど不快な症状が出ると思います。これは身体の中が熱くなって体温を下げるべきところにさらに熱いお湯が入って体温が上がるためです。こういうときは冷たいものを飲んでかまいません。というより、体温を下げるため、冷たいものを取るべきでしょう。必要なら塩類も取るとよいです。熱中症のときも同じ意味で体温が上がるお湯ではダメで、冷たいものが良いです。
 注意して欲しいのは、外出して身体が熱くなっても必ずしも冷たいものが良いというわけではないことです。たとえば、通勤などで汗をたくさんかいて熱くても、電車のクーラーなどで身体の中は冷えていることも多いのです。このときは当然、お湯です。身体の中が熱くなっているのか、冷えているのかわかるときは良いですが、判断しかねるときが多いと思います。こういう場合はどうするかというと、お湯を飲んでみればよいのです。気分が悪くなったり、不快な症状が出るなら、身体の中は熱くなっているので、冷たいものにすべきで、そうでなければお湯で大丈夫です。
夏は胃腸系が弱る時期なので、冷たいもののとりすぎに注意しましょう。そうしないと、夏バテが目に見えています。

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2018年6月30日 土曜日

「腎臓」が悪い?

「腎臓が悪いといわれました」といって来院するかたがときどきいます。同じように「肝臓が悪い」といわれたという人もいます。こういう場合、検査しても腎臓も肝臓も異常ないことがほとんどです。なぜ異常ないかというと、鍼灸師や薬剤師など東洋医学関係のところで「腎臓」や「肝臓」が悪いといわれているからです。東洋医学関係の人がうそを言っているのかと誤解されそうですが、そうではありません。東洋医学でいう「腎臓」や「肝臓」が悪いといっているのです。つまり東洋医学でいう「腎臓」や「肝臓」は現代医学でいう腎臓や肝臓とは別のものなのです。別のものであれば、検査で異常が見つからなくても当然なわけです。
現代医学でいう腎臓は解剖学が基礎となっています。腰の付近に対になってあるソラマメに似た形をした臓器を腎臓と名づけ、この臓器がどのように働いているか研究されてきたのが現代医学の腎臓です。東洋医学の「腎臓」は生体で内分泌系や泌尿生殖系などの働きをするものとして「腎臓」を考えたのです。具体的な臓器はあとから当てはめただけです。つまり、東洋医学の「腎臓」は、臓器を指しているのではなく、東洋医学でいう「腎臓」の働きのことをいっていると思ってもらえればよいと思います。「肝臓」も同じです。現代医学の肝臓は腹部の右上にあり、横隔膜の下にある大きな臓器を指しますが、東洋医学では自律神経、血液の循環の調整機能などの働きを「肝臓」というのです。
 したがって東洋医学で「腎臓が悪い」といったら、内分泌や泌尿生殖系などの働きがよくないということです。現代医学のいう血液のろ過機能などが悪いという意味ではないのです。鍼灸師など東洋医学関係の人は「腎臓が悪い」といわずに「東洋医学の腎臓が悪い」といえばよいのに、現代医学の腎臓と混乱するように「ジンゾウが悪い」というので、誤解が生じるのです。しかしこれは、東洋医学の人にいわせれば、現代医学の人は腎臓といわずに「現代医学でいう腎臓」といえばいいのだ、といわれそうで、こういわれると返す言葉はありません。そもそも腎臓や肝臓という言葉は東洋医学のためにあったもので、それを杉田玄白らが『解体新書』でドイツ語を訳すのに東洋医学の用語を使ったのです。そう考えると、東洋医学の方に優先権があるように思えます。
 東洋医学関係の人に腎臓や肝臓が悪いといわれても、驚かないでください。

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