患者さまのお悩み

2019年3月29日 金曜日

湯、散、丸

 葛根湯、当帰芍薬散、八味丸などの漢方薬の方剤名の最後に「湯」とか「散」、「丸」などという字が付いていますが、意味があるのをご存知ですか?「湯」というのは生薬を水で煎じ、その煎じ液を漢方薬とするものです。「散」というのは生薬を細かく砕いて粉末とし、それを漢方薬として飲むものです。「丸」というのは生薬を粉末にして、蜂蜜などで固め丸薬として漢方薬とするものです。
 本来はこのようにして使われていたのですが、エキス顆粒などの漢方薬は実はほとんどが煎じ薬になっています。当帰芍薬「散」といっても、生薬を水で煎じ、煎じ液をフリーズドライなどの方法でエキス顆粒としたもので、本来の「散」ではありません。
 それでいいのか、と疑問をもたれるかもしれませんが、エキス顆粒の薬だけではなく、生薬を使った本来の漢方薬の「散」や「丸」といわれているものも、ほとんどが生薬を煎じています。この場合、本来の「散」や「丸」と区別するため、「料」という字をつける場合が多いです。たとえば、当帰芍薬散料のように書きます。このようなルールがあるということは、「散」や「丸」を煎じるのが一般となっていることを示していると思います。なぜ煎じになってきたかというと、煎じ薬にした方がどうも薬効がよいらしいのです。原典どおりの「散」や「丸」で処方することは今で少なくなってしまいました。五苓散という漢方薬がありますが、これについて浅田宗伯という明治の漢方の大家が、「五苓散は煎じるより散として使うほうが良い」というようなことを言っています。やはり「散」は「散」として使った方が良いかと思ってしまいますが、これは逆に考えると、五苓散以外の「散」といわれる漢方薬は煎じるほうがよいといっているようにも考えられます。というのも、当帰芍薬散など他の「散」薬では「散」のほうが良いなどと言っていないのです。浅田宗伯というのは徳川慶喜の典医であり、明治の宮廷侍医にもなった本当の大家です。大正天皇を含め、えらい人をたくさん治療しています。こんな偉い人が言うのでは間違いなさそうです。蛇足ですが、のど飴の浅田飴はこの浅田宗伯の処方を基にしているので浅田飴という名がついています。

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2019年2月27日 水曜日

五臓六腑

 「これ、おいしいね、五臓六腑にしみわたるね」というときの「五臓六腑」は全身の臓器を示す東洋医学から来た言葉ですが、五臓とは何を指すか、六腑とは何を指すか知っていますか。
 五臓は肝臓、心臓、肺、腎臓と4つ答えられる方も多いのではないかと思いますが、最後の1つが少し難しいです。「○臓」という臓器を考えると、膵臓と脾臓というのが候補に浮かびますが(二つ知っていれば医学に詳しいです)、正解は脾臓です。脾臓という名前は聞いたことがあるかもしれませんが、どこにあるのか知らない人が多いのではないかと思います。上腹部の左のほうにあり、左の腎臓と接している臓器です。ただし、以前にも書いたことですが、東洋医学でいう「脾臓」は現代医学でいう脾臓とは違ったもので、働きは一致しません。
 六腑は難しいです。胃、小腸、大腸、膀胱、胆嚢と5つ出てくればなかなかのものですが、残りの1つの難易度が非常に高いです。というのも、東洋医学を学んだことがなければ知らない臓器で、現代医学ではないものだからです。それは「三焦」(さんしょう)というものです。初耳と思います。そんなものが身体にあったのかと思われるでしょう。東洋医学でも、三焦が今の臓器の何に当たるか諸説があり、よくわかっていません。「リンパ管」、「腸管膜」、「膵臓」、「働きだけあって実体のないもの」、「間質」などが候補に上がっていますが、確定できていません。どれにしても普通の人にはわかりにくいものばかりです。東洋医学は臓器がどこにあるかわからなくていいのか、といわれそうですが、現代医学は解剖を基礎にできているので、どの臓器がどこにあり、それがどのような働きをするかなどは重要です。ところが東洋医学は理論ができているところに臓器を当てはめているだけなので、実際の働きと臓器が一致しなくてもかまわないのです。

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2019年1月30日 水曜日

インフルエンザに注意しましょう

 今年はインフルエンザが、かなり流行っています。かからないためには、どうすればよいでしょうか?と患者さんにしばしば聞かれますが、答えは簡単です。寝不足、過労などに気をつけ、睡眠時間と食事に注意をし、処方されている漢方薬を飲めば免疫力も上がるので大丈夫です、と答えています。体質にあった漢方薬を飲んでいれば、免疫力は上がり、インフルエンザや風邪には、なかなかかかりません。実際、私自身、このことを守れているときにはインフルエンザや風邪にかかったことありません。忙しくて寝不足をしたり、過労のときは風邪などに罹患してしまうことがあります。危ないとわかっているので注意するのですが、やはり、疲れや寝不足は免疫力を落としてしまうのでしょう。寝不足や過労に注意する事が大事のようです。また一般的な手洗いやうがいなども大事と思います。
 インフルエンザにかかってしまったらどうするかというと、抗インフレンザ薬、タミフルやゾフルーザ、リレンザなどを、できる限り早く使用することがお勧めです。漢方薬もありますが、使い方が多少面倒です。漢方薬は体質を考えて処方を決める必要があるからです。しばしばインフルエンザには麻黄湯が良いというようなことが言われていますが、体質があっている場合のことです。麻黄湯は身体が「実」(身体の闘病反応が強いこと)のとき使う薬で、身体が弱って闘病反応が弱っているとき使うと、悪化する危険があります。仕事が忙しく疲れているところにインフルエンザにかかってしまった場合などは、闘病反応は低下していると考えられるので麻黄湯は止めるほうが無難です。タミフルやゾフルーザのほうが安全で確実です。高齢者も麻黄湯が適する人はあまりいないので、やはり飲まないほうが良いです。高齢者は麻黄附子細辛湯が適することが多いですが、やはり、使用には注意が必要で、普通の人は現代薬を使うほうが安全です。
 熱が下がり落ち着いてきたところで、食欲がない、だるいなどの症状が残るとき、漢方薬の出番です。そんなときは補中益気湯(これはそれほど危険な薬ではありません)が良いことが多いです。
 蛇足ですが、麻黄湯をインフルエンザの予防的に飲む人がいました。体質に合っていればよいのですが、合わない場合は副作用をおこしますし、インフルエンザ予防のために麻黄湯を飲むという方法はありません。

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2018年12月28日 金曜日

(続)眠気を覚ます漢方薬

 前回に少し補足です。葛根湯はいくつもの製薬会社から販売されています。どれも同じかというと、葛根湯に使われる生薬の7種類は同じですが、使われている生薬の品質と、生薬の使用量が製薬会社によって違っています。目を覚ますのに重要な生薬、麻黄(まおう)の量は、医療用の葛根湯では3~4g、市販の葛根湯では2~4gと会社によって幅があります。単純に考えると、麻黄の量2gと4gではその中に含まれるエフェドリンの量は2倍の差があることになり、効果に差が出そうです。また使用する生薬の品質は重要です。工業製品と違って天然物は品質による差は大きいのです。例えばミカンを食べても、味が濃く甘くておいしいものもあれば、味は薄く何を食べているかわからないようなミカンもあります。品質の良いものと悪いものでは、エフェドリンの含有量にかなり差があり、効果も大きく違います。北里研究所にいた頃、時々煎じて葛根湯を飲んでいたのですが、あるとき飲んだ葛根湯は、急に眼がパットさえ、いつもと比べて頭がスッキリしたのでびっくりしたことがあります。これは麻黄のロットの違いによるものですが、その差に驚きました。品質による作用の差は皆さんが考えているよりも大きいものなのです。ただ、医薬品として使用されるからには、ある程度の基準が決められているので、あまり心配することはないのかもしれませんが。
 葛根湯の目を覚ます作用は、麻黄の品質と使用量によって製薬会社によりかなり違うことが理解してもらえたかと思います。販売されている葛根湯なら、生薬の成分量が書いてあるので、それを見て選んだほうがよいです。その中の麻黄(まおう)の量が少なくとも3g以上はいっているものにすべきです。3gより4gの方がよいのですが、品質の違いで1gくらいの差は関係ないこともあります。内服する葛根湯の品質がわかるといいのですが、これは製薬会社を信じるしかありません。
 顆粒などの粉薬では効果を感じられない場合は、高いですが品質の良い麻黄を使った煎じ薬がよいです。やはり品質が悪い生薬ですと効果は弱いです。

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2018年11月30日 金曜日

眠気を覚ます漢方薬

 受験シーズンなので、眠気覚ましの漢方薬について書きます。漢方薬で眠気を覚ます薬があるのかというと、本来の使われ方ではないのですが、あります。それは意外かもしれませんが、風邪薬で有名な葛根湯です。現代薬の風邪薬というのは眠くなることが多いので大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、葛根湯には眠くならず逆に目を覚ます作用があるのです。漢方の大家、大塚敬節先生も使われていたようです。
 なぜ眠気に効くかというと、現代医学的にある程度説明ができます。葛根湯の構成生薬に麻黄(まおう)という生薬があり、この中にエフェドリンという物質が含まれています。これは咳など止める作用のある物質ですが、目を覚ます作用もあるのです。実は覚せい剤、メタンフェタミン(その昔疲労がポンととれるので「ヒロポン」といわれていました)はこのエフェドリンから作ることができるのです。つまり麻黄のエフェドリンは覚せい剤のメタンフェタミンと構造が似ているので合成することができるのですが、構造が似ているので似た作用を持つのです。そのため覚せい剤の持つ覚せい作用が多少あり、目を覚ますことができるのです。ただ覚せい剤に似ているといっても危険な薬ではないので心配はいりません。
 勉強をしていると、目を使うためか首筋が張ってきます。この首筋の張りにも葛根湯は効果を示すので、他の麻黄が入った漢方薬を飲むより効果が良く目が覚めます。ただし、葛根湯は胃腸が丈夫ではない人が飲むと、胃腸の調子を悪くすることがあるので注意が必要です。胃腸が弱くない人でも空腹で飲むと、やはり胃腸を悪くすることがあります。お腹に何も入っていないで飲んだ方が効果はあるのですが、連用するときは胃腸障害に気をつけてください。また煎じ薬と比べると顆粒の薬では薬効は落ちますが、煎じ薬でも質の悪い麻黄が使われていると効果は落ちます。

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