患者さまのお悩み

2019年5月31日 金曜日

(続)プラシーボ効果

 前回、プラシーボ効果についてお話しましたが、今回はその逆のノセボ効果についてです。ノセボ効果というのは、プラシーボ効果の逆とも言えるもので、薬効のない偽薬で有害作用が現れることをいいます。たとえば小麦粉を薬のように思わせ、これは副作用に頭痛がありますといってのませます。そして頭痛が起きたら、ノセボ効果があったというのです。
そこで問題です。薬局などで薬の副作用の説明を受けた場合と、受けない場合とでは副作用の発現に差があると思いますか?副作用の発現に差があるとしたら、説明を受けた場合に多いのでしょうか?受けない場合でしょうか?
 良いことか悪いことかわかりませんが、薬の説明を受けた方が副作用の発現が増えるのです。副作用を説明されると、その副作用を起こすのではないかという不安感からノセボ効果が起きるからではないかといわれています。人間は自分で考えているよりもはるかに心の影響を受けやすいのです。
 漢方薬の副作用も説明が増えてからから、副作用を訴える患者さんが多くなりました。しかし、漢方薬は草の根や木の実、種などからなり、食べ物とあまりかわらないものです。食べ物でもソバアレルギーのような「副作用」があるように、漢方にもある程度の副作用はありますが、めったにあるものではありません。
ところが、今日もありました。漢方薬飲んでから足がつるようになり、近くの医院に行きました。「漢方薬のためでは?」といわれ、漢方の内服を減らしたのです。すると、足がつるのが少なくなったそうです。経過などから、漢方薬のため足がつったとは考えられませんが、この方に、漢方薬を普通に内服してもらうのは難しくなります。ノセボ効果が起きて、漢方薬を多く飲むと足がつるようになっているかもしれないからです。患者さんが悪いわけではないのですが、こうなると手の施しようがなくなります。処方した漢方薬が使えなくなってしまうのが困るのです。不安感を持ちながら薬を飲んでもあまり効かないのです。
こうならないよう最初の処方には細心の注意を払っていますが、起きてしまうのがノセボ効果で、これにいつも困らされています。

投稿者 田中医院 | 記事URL

2019年4月27日 土曜日

プラシーボ効果

 プラシーボ効果ってご存知ですか?薬効のない偽薬(たとえば小麦粉)の投薬によって、(心理的効果で)ある病気が良くなることです。たとえば頭痛が起きている人に「この頭痛薬よく効きますよ」といって偽薬を飲ませ、頭痛が改善すればプラシーボ効果があったというわけです。
 実はこのプラシーボ効果は、日常生活でもしばしば利用されています。飲み薬ではありませんが、小さい子が怪我したときなどに患部に手をやり、「痛いの痛いの飛んでいけー」といって子供を泣き止ませた経験をお持ちの人は多いと思います。傷は治らなくても、心理効果で痛みが止まってしまうのです。子供なら心理効果で治るかもしれないが、大人の自分ではこのようにはいかない、とほとんどの人が思っていると思います。しかしプラシーボ効果というのは考える以上に強いものなのです。病気によって違いますが、偽薬でどのくらいの人に改善が見られるかというと、頭痛などでは30-40%といわれます。頭痛を起こしている人の3人に1人は小麦粉を処方すればよくなるということです。
 いろいろな「あやしい」「薬」が売られていますが、そういう「薬」でも当然プラシーボ効果は起きますから、必ずその薬が効いたという人はいます。本当に薬効があって効くならよいですが、プラシーボ効果で改善しているだけというのは意外に多いのです。これでは困るので、科学的な検証で本当に効果があるかどうか確かめられ、その検証をクリアーして始めて本当の薬と認められるのです。
 ここでその怪しい薬に漢方薬を当てはめると、漢方薬を疑いの目で見ている人からすれば、やはり怪しい薬になります。というのも、まだ部分的にしか科学的に検証されていないからです。このため、漢方薬は効かないものだという人はいますし、厚生省によって保険薬からはずされそうになるのです・・・
もう少し違うことを書くはずだったのですが、話が違う方向にずれてしまいました。長くなってしまいますので、次回にこの続きを書きます。

投稿者 田中医院 | 記事URL

2019年3月29日 金曜日

湯、散、丸

 葛根湯、当帰芍薬散、八味丸などの漢方薬の方剤名の最後に「湯」とか「散」、「丸」などという字が付いていますが、意味があるのをご存知ですか?「湯」というのは生薬を水で煎じ、その煎じ液を漢方薬とするものです。「散」というのは生薬を細かく砕いて粉末とし、それを漢方薬として飲むものです。「丸」というのは生薬を粉末にして、蜂蜜などで固め丸薬として漢方薬とするものです。
 本来はこのようにして使われていたのですが、エキス顆粒などの漢方薬は実はほとんどが煎じ薬になっています。当帰芍薬「散」といっても、生薬を水で煎じ、煎じ液をフリーズドライなどの方法でエキス顆粒としたもので、本来の「散」ではありません。
 それでいいのか、と疑問をもたれるかもしれませんが、エキス顆粒の薬だけではなく、生薬を使った本来の漢方薬の「散」や「丸」といわれているものも、ほとんどが生薬を煎じています。この場合、本来の「散」や「丸」と区別するため、「料」という字をつける場合が多いです。たとえば、当帰芍薬散料のように書きます。このようなルールがあるということは、「散」や「丸」を煎じるのが一般となっていることを示していると思います。なぜ煎じになってきたかというと、煎じ薬にした方がどうも薬効がよいらしいのです。原典どおりの「散」や「丸」で処方することは今で少なくなってしまいました。五苓散という漢方薬がありますが、これについて浅田宗伯という明治の漢方の大家が、「五苓散は煎じるより散として使うほうが良い」というようなことを言っています。やはり「散」は「散」として使った方が良いかと思ってしまいますが、これは逆に考えると、五苓散以外の「散」といわれる漢方薬は煎じるほうがよいといっているようにも考えられます。というのも、当帰芍薬散など他の「散」薬では「散」のほうが良いなどと言っていないのです。浅田宗伯というのは徳川慶喜の典医であり、明治の宮廷侍医にもなった本当の大家です。大正天皇を含め、えらい人をたくさん治療しています。こんな偉い人が言うのでは間違いなさそうです。蛇足ですが、のど飴の浅田飴はこの浅田宗伯の処方を基にしているので浅田飴という名がついています。

投稿者 田中医院 | 記事URL

2019年2月27日 水曜日

五臓六腑

 「これ、おいしいね、五臓六腑にしみわたるね」というときの「五臓六腑」は全身の臓器を示す東洋医学から来た言葉ですが、五臓とは何を指すか、六腑とは何を指すか知っていますか。
 五臓は肝臓、心臓、肺、腎臓と4つ答えられる方も多いのではないかと思いますが、最後の1つが少し難しいです。「○臓」という臓器を考えると、膵臓と脾臓というのが候補に浮かびますが(二つ知っていれば医学に詳しいです)、正解は脾臓です。脾臓という名前は聞いたことがあるかもしれませんが、どこにあるのか知らない人が多いのではないかと思います。上腹部の左のほうにあり、左の腎臓と接している臓器です。ただし、以前にも書いたことですが、東洋医学でいう「脾臓」は現代医学でいう脾臓とは違ったもので、働きは一致しません。
 六腑は難しいです。胃、小腸、大腸、膀胱、胆嚢と5つ出てくればなかなかのものですが、残りの1つの難易度が非常に高いです。というのも、東洋医学を学んだことがなければ知らない臓器で、現代医学ではないものだからです。それは「三焦」(さんしょう)というものです。初耳と思います。そんなものが身体にあったのかと思われるでしょう。東洋医学でも、三焦が今の臓器の何に当たるか諸説があり、よくわかっていません。「リンパ管」、「腸管膜」、「膵臓」、「働きだけあって実体のないもの」、「間質」などが候補に上がっていますが、確定できていません。どれにしても普通の人にはわかりにくいものばかりです。東洋医学は臓器がどこにあるかわからなくていいのか、といわれそうですが、現代医学は解剖を基礎にできているので、どの臓器がどこにあり、それがどのような働きをするかなどは重要です。ところが東洋医学は理論ができているところに臓器を当てはめているだけなので、実際の働きと臓器が一致しなくてもかまわないのです。

投稿者 田中医院 | 記事URL

2019年1月30日 水曜日

インフルエンザに注意しましょう

 今年はインフルエンザが、かなり流行っています。かからないためには、どうすればよいでしょうか?と患者さんにしばしば聞かれますが、答えは簡単です。寝不足、過労などに気をつけ、睡眠時間と食事に注意をし、処方されている漢方薬を飲めば免疫力も上がるので大丈夫です、と答えています。体質にあった漢方薬を飲んでいれば、免疫力は上がり、インフルエンザや風邪には、なかなかかかりません。実際、私自身、このことを守れているときにはインフルエンザや風邪にかかったことありません。忙しくて寝不足をしたり、過労のときは風邪などに罹患してしまうことがあります。危ないとわかっているので注意するのですが、やはり、疲れや寝不足は免疫力を落としてしまうのでしょう。寝不足や過労に注意する事が大事のようです。また一般的な手洗いやうがいなども大事と思います。
 インフルエンザにかかってしまったらどうするかというと、抗インフレンザ薬、タミフルやゾフルーザ、リレンザなどを、できる限り早く使用することがお勧めです。漢方薬もありますが、使い方が多少面倒です。漢方薬は体質を考えて処方を決める必要があるからです。しばしばインフルエンザには麻黄湯が良いというようなことが言われていますが、体質があっている場合のことです。麻黄湯は身体が「実」(身体の闘病反応が強いこと)のとき使う薬で、身体が弱って闘病反応が弱っているとき使うと、悪化する危険があります。仕事が忙しく疲れているところにインフルエンザにかかってしまった場合などは、闘病反応は低下していると考えられるので麻黄湯は止めるほうが無難です。タミフルやゾフルーザのほうが安全で確実です。高齢者も麻黄湯が適する人はあまりいないので、やはり飲まないほうが良いです。高齢者は麻黄附子細辛湯が適することが多いですが、やはり、使用には注意が必要で、普通の人は現代薬を使うほうが安全です。
 熱が下がり落ち着いてきたところで、食欲がない、だるいなどの症状が残るとき、漢方薬の出番です。そんなときは補中益気湯(これはそれほど危険な薬ではありません)が良いことが多いです。
 蛇足ですが、麻黄湯をインフルエンザの予防的に飲む人がいました。体質に合っていればよいのですが、合わない場合は副作用をおこしますし、インフルエンザ予防のために麻黄湯を飲むという方法はありません。

投稿者 田中医院 | 記事URL

田中医院 tel:03-3266-1407